分析方法論
モンテカルロ・シミュレーション
各車両分析につき10,000回の独立したシミュレーションを実行します。 各回では、対象期間内にどの部品が故障し、どれだけの修理費用が発生するかをランダムに決定します。 その結果として修理費用の頻度分布が得られ、パーセンタイル値として提示されます。
このアプローチは単純な平均値計算よりも現実的な推定が可能です。 修理費用と故障タイミングの自然なばらつきを明示的にモデル化しているためです。
修理費用の対数正規分布
修理費用は正規分布に従いません。小・中規模の修理は頻繁に発生しますが、 まれに非常に高額な修理(エンジン交換、ミッション交換など)も発生します。 対数正規分布はこのパターンをより現実的に表現できます。
各故障カテゴリには中央値修理費用と分散パラメータ(シグマ)が設定されており、 シミュレーション内で各損傷コストがこの分布から抽出されます。
データ基盤
本サイトのデータは「実データ」と「推定値」の2層で構成され、 サイト内では常に区別して表示しています。
① 実データ — 国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」
各車両ページの「リコール・不具合情報」セクションと「リコール一覧」記事は、 国土交通省に届け出・報告された実データに基づきます。 対象8メーカーについてリコール届出 約4,800件、ユーザー申告の不具合情報 約2万件(対象75モデル分)を収集・集計しています(2026年8月30日時点。 通称名での集計のため、改良前後の複数世代を含む場合があります)。 出典:国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」。定期的に再取得して更新します。
② 推定値 — 統計モデルによる故障率・修理費用
故障率・信頼性スコア・修理費用予測は統計モデルによる推定値です。 日本ではドイツのTÜVレポートのようなモデル別検査統計が一般公開されていないため、 海外の定期車両検査統計(TÜV等)に見られる故障傾向をベースに、 日本車の品質水準・車齢構成・走行環境(年間走行距離の少なさ等)を 反映して調整したモデルを構築し、モデル・車齢・故障カテゴリ別の 故障率を推定しています。実際の検査データそのものではない点にご留意ください。
修理費用の推定には、各自動車メーカーの部品価格表、 整備業界団体の統計データ、および日本市場の標準的な工賃を組み合わせています(2025年時点)。 いずれも目安であり、個々の車両の状態により実際の費用は大きく異なります。
日本の走行環境
日本の平均年間走行距離は約8,000kmで、ドイツ(13,000km)やフランスより大幅に少なく設定しています。 都市部での公共交通機関の普及、郊外での短距離移動中心の利用パターンが反映されています。 ただし、走行距離が少なくても経年劣化(ゴムブッシュ・シールなど)は進行するため、 年齢と走行距離の両方を考慮した分析を行っています。
結果の読み方 — パーセンタイル
シミュレーション結果は3つのパーセンタイルで表示されます:
- P10(楽観シナリオ) — シミュレートされた10%のケースがこの値以下。 車両状態が良好で運が良い場合の目安。
- P50(中央値) — 半数のシナリオがこの値以下。平均的な条件における最良の単一推定値。
- P90(悲観シナリオ) — 90%のシナリオがこの値以下。 財務リスク評価の際に参考とすべき値。
注意:すべての予測は統計的推定値です。実際の車両の修理費用は シミュレーション結果と大きく異なる可能性があります(上下両方向に)。